<4-1> (4.1.1)
であるを探す。ところが、この問題設定は不十分である。なぜ不十分か、例をあげて説明しよう。たとえば今がであると与えられて、
「で微分を実行したときにとなる関数は何か?」と質問され、一人が「それはです」と答え、別な一人がそれにでない適当な定数を加え、「それはです」と答えた。定数は何であってもそれを
で微分をするとになるから、両者の微分を実行した結果はともにである。したがって、質問に対する答えは
とのどちらも正しいことになる。
で微分を実行したらになる関数のことをの「不定積分」と呼ぶが、上で示したように、このままではの不定積分がであるのか、であるのか一義的に定まらない。そして、この決め方は教科書によって必ずしも同じではない。そこで、この教科書では不定積分を次のように決めておく。
「の不定積分」は
<4-2> (4.1.2)
を満足するの 不定な付加定数を含まない関数部分と定義し、それを
<4-3> (4.1.3)
と書く。したがって、の場合の不定積分はである。注意すべきは、(4.1.2)式を満足する関数 は一般的には ではなく、それに任意の定数を加えたでなければならないことである。これは後に微分方程式を学ぶときに重要になる。
このように、不定積分にともなう不定な付加定数(「積分定数」と呼ぶ)をに含ませずあらわに書くように定めるのは、どちらでもよいから一方を選んだのではなく、積分定数が物理では重要な意味を持っているからである。実際に次の章ではこの約束にしたがって不定積分を扱う。しかし積分定数の書き方にどちらの方法を採用したとしても、その書き方が後に学ぶ定積分に影響を与えることはない。
以下にいくつかの関数の不定積分を「それを微分したときに積分される関数となる」を手掛かりにして求めた結果を与える。米印(*)がついた結果は第七章で学ぶ「置換積分」や「部分積分」を使って*印が付いていない結果から導くことができるので、余力があれば試みるとよい。
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<4-18> | <4-19> |
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<4-22> | <4-23> |
<4-24> | <4-25> |
<4-26> | <4-27> |
<4-28> | <4-29> |
<4-30> (4.2.1)
と書く。このときとの大小は問わない。すなわちであってもよいし、
であってもよい。もちろん
の場合もある。このときは当然
である。
(4.2.1)式の定義から
<4-31> (4.2.2)
であることは明らかであろう。以前、不定積分を導入した時、「不定積分に不定数を含ませるか含ませないかは定積分に影響しない」と述べたが、定積分が不定積分の差で与えられることからそれが理解できるであろう。