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第八章 積分と関数の変換


§1. 複素積分とコーシー積分

 (x-y)平面上で行なう線積分と非常に似ている積分がある。複素数を変数とする複素関数の積分で、「複素積分」と呼ばれる。複素数は実数と虚数が対になった数で、二つの実数を表す (x,y)i2=-1の性質を持つ虚数単位iを使って z=x+iyと表されること、その実数部の値 xx座標とし、虚数部の値yy座標とする複素数の(x-y)平面表現が可能であることは理解していると思う。さらに、普通の平面座標系と同じように複素平面の原点と複素数を表す点を直線で結んだ時、その線分の長さ rと線分がx軸となす角(偏角)θを使うと、 xy

<8-1> (8.1.1)  x=rcosθ y=rsinθ

なので、z

<8-2> (8.1.2) z=re

と表すことができる。この複素数の円座標表現を第三章「§2.複素数と複素平面」で学んだ。
 この複素数を変数に持つ関数を「複素関数」といい、その値も一般には複素数である。複素関数をその変数について積分する場合がある。複素関数が2つの変数 (x,y)を持つことから、その積分は (x-y)平面で行われる線積分ととてもよく似ている。似ているということは、(x-y) 平面で行われる線積分の知識が複素積分にも使えるということである。詳しい説明はこの教科書の範囲を越えるので、ここでは物理を学ぶときに最も多く使われる「コーシー積分」と、それに関連した「留数の定理」を証明なしに与ることにし、二、三の例題を使ってその有用性を示すことにする。「コーシー積分」の詳しい解説と「留数の定理」の証明は数学できちんと学んでほしい。
 いま対面する紙面が複素平面であるとすると、紙面上の一点は一つの複素数z(すなわち一組のxy)に対応するので、複素面上にある適当な経路に沿った線積分を考えることができる。そこで今、複素平面にとった任意の 閉じた経路Cを一周する関数 <8-3>f(z )z-z0の線積分を考え、それを

<8-4> I=Cf (z)z-z0dz

と書く。ただしdz C上にある短い経路部分である。また経路の回り方は対面する紙面上で左回り(反時計回り)を基準とする。上式の右辺にあるCは「その右側にある関数に対し、指定された閉じた経路Cに沿って複素平面上で左回りに線積分を行え」という意味の記号である。複素平面上で各点の(x,y)座標を与えたときに決まる関数の値が複素数であることを除けば、この積分は第2章で学んだ (x-y)面上の線積分と同じである。もちろん、今の場合は積分の結果は複素数になる。上の積分を考えるのは、それが以下のように特別におもしろい結果を与えるからである。
 この積分をていねいに調べると、もしCが囲む複素平面の領域内部に関数 f(z) z-z0を無限大にする zの値(「特異点」という)が分母の z=z0以外になければ、考えている積分を実行した結果は2πif(z 0)に等しいことが証明される[1]。すなわち、もし f(z)z- z0C で囲まれた領域の内部にz=z0以外の特異点を持たなければ、

<8-5> (8.1.3) 12πi Cf(z)z- z0dz=f(z0)

が成り立つ。積分を実行するとき、もし経路の回り方が右回り(時計回り)の時は右辺に負(マイナス)符号がつく。もし f(z)自身が Cの内部に特異点を持ち、その結果 f(z)z- z0が分母を0 にするz=z0以外に特異点を持つときには少し違った扱いが必要になるが、ここではそれはないことにしておく。(8.1.3)式を「コーシーの積分定理」といい、物理で非常に多く使われる重要な積分定理である。実際にいくつかの例を使ってその重要性と同時に使い方を示そう。

【例題】 例として、物理でよく使われる「ガウスの積分公式」と呼ばれる積分式

<8-6> (8.1.4) - 1x2+1dx =π

をコーシーの積分定理を使って証明しよう。もちろんコーシーの積分定理を使わなくてもこの積分公式を証明することは出来るが、実際に行うとなると結構面倒なことになる。

【証明】 (8.1.4)式の積分変数はxで、積分領域が -x+の積分であるが、これを複素平面の実数軸上(x軸上)で領域(-x +)にわたって行なう複素関数 1z2+1 の積分と考える。さらに、適当な正の実数値Xを考えて、同じ複素積分を実数軸上-Xx +Xで行い、その結果をX として-xで行なった積分の結果を得ることにする。
 そこで、最初の経路(-Xx+ X)で行なう積分に仮想的な経路を付け加える。付け加える経路は原点を中心とした半径 Xの半円で、それをz の正の虚数軸がある面(複素平面の上半面)に加えることにする。この付け加えた半円経路を C'と書くことにする。C'を付け加えると、 x=-Xから出発して x=+Xまで行き、そこから C'を経由してx =-Xにもどる閉じた一つの経路ができる。この全経路を C(X)と書き、この経路に沿って左回りに行なう積分を I(X)と書く。すなわちI (X)

<8-7> (8.1.5)  I(X)=-X+X 1x2+1dx +C'1 z2+1dz =C(X) 1z2+1 dz

である。経路C'上での積分では変数が複素数なので実数 xzとしていることに注意せよ。
 第3§ 2「複素数と複素平面」の問で述べた因数分解に関連することがここで重要になるので、それをもう一度繰り返そう。すなわち、  高校の数学で、x2-a2 (x+a)( x-a)と因数分解できるが、 x2+a2は因数分解が出来ないとされた。しかしこのことはしばしば誤解される。「x2+a2 は因数分解が出来ない」を正確に言うと「もし xの値を実数に限定すれば、x2 +a2は因数分解が出来ない」のであって、もし xに複素数(虚数)の値を許せば、 x2+a2は <8-8>x2+ a2=(x+ia)(x-ia )のように因数分解をすることができる。以前、「特殊な例を最初に学ぶと、ついそれが“普通”に感じられ、“普通”が“特殊”であると誤解することがあるので、気を付けないといけない。」と書いたことを憶えているかも知れない。これもその一つの例である。つまり変数を実数に限定しなければ、その高次べきを含む式はどのような式であっても必ず因数分解をすることができる。したがって(8.1.5)式右辺にある(z2+1)は <8-9>z2+ 1=(z+i)(z-i) と因数分解することができ、I(X)

<8-10> (8.1.6)  I(X)=C(X) 1(z+i)(z -i)dz = C(X)f( z)z-idz

と書くことができる。ここで<8-11>f( z)1z+iとした。付け加えた半円C'の半径 Xは最終的にとされるので、始めから Xを十分大きく選んでもよく、それを 1より大きく選んでおく。そうすると、 -iの大きさは<8-12> (-i)×(- i)*=-i×i =1であり、また f(z)が持つ特異点 (z=-i)は閉じた経路 C(X)が囲む領域の内部にはないから、 C(X)が領域内部に含む特異点は f(z) z-iの分母を 0にする(z=i)だけである。 C(X)の回り方が左回り(反時計回り)であることに注意して(8.1.3)式のコーシーの積分定理を使うと、

<8-13> (8.1.7)  I(X)=2πi×f(z=i )=2πi× 12i=π

を得る。
 (8.1.7)式の左辺を元の形(元の積分に経路C'を加えた形)にもどし、加えた半径Xの半円経路上で積分される関数の分母にある zに大きさXと偏角θを使った表現z =Xeを用い、最後に Xとすることを考えれば、分母に X2があるために積分される1 z2+1も、したがってその半円経路上 (C'上)の積分も X0になることがわかる。よって(8.1.7)式の左辺はX

<8-14> (8.1.8)  I(X)=-XX 1x2+1dx +C'1 z2+1dz - 1x2+1 dx

となる。すなわち、Xとした(8.1.7)式は(8.1.4)式の積分公式

<8-15> -+ 1x2+1dx =π

を与えることがわかる。
 ここでの説明を複雑と感じたかもしれないが、慣れると頭の中だけでこの結論を導くことができる。もしこの公式を普通の積分を使って証明しようとすると、とてもたいへんである。
 もし余裕があれば、上のやり方を真似て以下の練習問題を行うと、コーシーの積分定理がよく理解できるようになるであろう。

  1.  <8-16> - 1x2+2dx =π2

  2.  <8-17> - 1x2+2x+ 3dx=π2

  3.  <8-18> 0 cosxx2+1 dx=π2e

  4.  <8-19> 0 1x3+1dx= 2π33


§2. フーリエ級数とフーリエ変換

 この節では「フーリエ級数」と、関数の「フーリエ級数展開」と、「フーリエ変換」を学ぶ。フーリエとは 18世紀から19世紀にかけて多くの数学的業績を残したフランスの数学者であり物理学者であったジョゼフ・フーリエのことである。物理や数学の教科書でフーリエの名はこの他に「フーリエ係数」「フーリエ分解」など多くのことがらが現れるが、基本的には全て「フーリエ級数」に関係している。
 「人工視覚」あるいは「人工網膜」という言葉を耳にした人がいるのではないだろうか。視覚を失ってから結婚した男性が 10年間付き添った妻を人工網膜を使って初めて「見た」動画が多くの人たちの感動を呼んだニュースを耳にしたことがあるかもしれない[2]。 「見る」仕組みは、(1)眼球が外部の像から来る光をとらえる、(2)網膜がその光情報を微弱な電気信号に変換する、(3)変換された電気信号が視神経を通じて脳の視覚中枢に送り込まれる、(4)視覚中枢が電気信号を像として我々に意識させる、という一連の行程から成っている。人工視覚は、この第一あるいは第二の機能が損なわれて電気信号への変換が出来ない障害者の視覚を補助する。すなわち、外部の像を装着した眼鏡に埋め込まれた小さなカメラがとらえ、眼球内あるいは眼球外の装置がその光情報を電気信号に変換するのである。その電気信号が視神経を通じて視覚中枢に送り込まれ、脳内で像が再生される。
 人工視覚のもっとも核芯となる部分は光情報を電気信号(数値情報)に変換する機構にある。変換自体はマイクロコンピューターで機械的に行われるが、その数学的な原理は「フーリエ変換」と呼ばれ、それがこの節の主題の一つである。この具体例のように「フーリエ変換」はとても多くの現代技術の内部で、しかしながらほとんど気づかれることなく利用されている。
 それでは「フーリエ級数」から話を始めよう。ギターを演奏できなくてもその構造と音が出る仕組みは知っているであろう。ギターは物理で振動を学ぶと現れる「共鳴」と呼ばれる現象を利用して増幅された様々な音程の音を出す楽器である[3]。ギターの本体には元になる音を取り込んで共鳴を起こすためのサウンド·ホールという穴が開けられている。その穴を横切って張られた金属またはナイロン製の弦をフレットとよばれる金属の突起部に押しつけることで横切る弦の長さを変え、それをはじいて出る音をサウンド·ホールに送り込み、様々な音程で増幅された共鳴音を出す。そして全ての弦楽器はギターと同じように「長さの異なる弦が異なる音程を持つ」ことを利用している。
 ギターの弦であれバイオリンの弦であれ、ある長さで両端が固定された弦は、その長さで決まる一連の音しか出すことができない。この一連の音に対応する弦の振動を「基準振動」という。基準振動には基本となる振動がある。この基本となる振動を「基本振動」という。すべての弦楽器は弦の長さを変えることによって基本振動の音を変えるのである。
 ある長さの弦には「基準振動」以外の振動は許されないために、「基準振動」はある長さを持つ弦が出す音を特徴づける最も重要な要素になる。この「基準振動」の概念が時を経て20世紀に入ってから思わぬ姿で現れ、現代物理学の基礎である「量子力学」を作り上げる理論背景となった。現代物理学の背景と音楽に結びついた物理学との間にこのような密接な関係があるのはとてもおもしろい事実である。その「基準振動」の数学がここで学ぶ「フーリエ」の名が付いたいくつかのことがらである。

【関数のフーリエ級数展開】

 弦の基準振動をもう少し詳しく説明しよう。いま両端を固定した長さの弦がある。話の都合上、弦が水平であるとして弦の方向に沿ってx軸を考え、弦の左端をその原点とする。そうすると弦の右端のx座標は である。
 この弦に振動を起こさせると、弦は様々な様式で振動する。その振動の様子を仔細に観測すると、弦には x軸に沿って大きく振動する点、あまり大きく振動しない点、全く振動しない点が存在する。それらの位置には規則性があり、その規則性のあり方を物理では振動の「モード」という。全く振動しない点を振動の「」、一番大きく振動する点を振動の「」と呼ぶが、今の場合、固定されている弦の両端は必ず振動の一つの節になっている。そして、振動のさせかたによって両端を節とした可能な振動モードが全て弦の振動として実現する。すなわちこの弦には、

  1. x=0 x=ℓの点以外に節を持たず中間点ℓ/2が振動の腹となるモード、
  2. x=0 x=ℓに加えx=ℓ/2の点が節となり、各節の二つの中間点(すなわち、x=ℓ/4の点と x=3ℓ/4の点)が腹となるモード、
  3. x=0ℓ/2 に加えx =ℓ/4の点とx=3ℓ/4の点が節になり各節の四つの中間点(すなわち、x=ℓ/8 x=3ℓ/8x=5ℓ/8x=7ℓ/8の点)が腹となるモード
  4. ……
というようにによって決まる一連のモードが実現する。
 これらのモードで弦が振動をしている様子を良く知っている関数を使って表すことができる。すなわち、 sinθはその角度 θθ=0,π, 2π,3π,,nは自然数)ラジアンのときに 0になるので、振動方向(x軸に垂直な方向)を上向きが正の y軸とし、弦の振動している点の y座標をyで表すと、上で与えた弦の振動モードはそれぞれ
  1. <8-20> y=A1sin πxy 1

  2. <8-21> y=A2sin xy 2

  3. <8-22> y=A3sin xy 3

  4. ……
と書ける。ここでA1.A2 ,A3,……は弦が振れる最大の大きさ(振幅)である。以上をまとめて、長さの弦に生じる全ての振動モードを

<8-23> (8.2.1)  yn(x)=Ansin nπx (n=1,2,3,)

と表すことができる。これらの振動を長さの弦の「基準振動」という。
 正弦関数sinθや余弦関数 cosθという三角関数はその角度変数 θ2πラジアンごとに同じ値を繰り返す。このような関数を周期2πの「周期関数」という。(8.2.1)式右辺の三角関数は、角度θが弦の振動する位置 xに関係しており、x が変わると角度が変化する周期2πの周期関数である。 xが大きくなって角度が2 π増加し、三角関数が同じ値になるx軸上の距離を「波長」と呼び、それをλで表す。
 たとえば上のモード1の場合の波長は次のようになる。位置 xにおける三角関数の角度が πxθ0 であり、振動がy=Asin θ0であったとする。xから λ1だけ離れた位置 (x+λ1) で角度が2πだけ変わり、 yxの点における振動と同じ値になったとする。そうするとπ( x+λ1)=θ0+2 πであり、πx= θ0であるから、λ1 =2である。これがモード1の波長である。
 同様にモード2の波長は λ2=22=、モード 3の波長はλ 3=23となり、同様の議論を繰り返すと、長さ の弦の全ての基準振動の波長は <8-24> λn=2n ,(n=1,2,3, )と書けることがわかる。したがって(8.2.1)式の基準振動を対応する波長を使って表すと

<8-25> (8.2.2) yn(x)= Ansin2πx λn,(n=1 ,2,3,)

である。
 この基準振動はとても重要で面白い役割を果たす。x=0x= 0となる関数があれば、それがどのような関数であっても、この基準振動を使ってその関数を表すことができるのである。すなわち、そのような関数をf(x)とすれば、 f(x)

<8-26> (8.2.3) f (x)=n=1 Fnyn(x) =n=1 Fnsin 2πxλn

と表すことができる。これを「関数f(x)基準振動に分解する」と言う。このとき、 f(x)が持つ全ての数学的特徴は展開の係数 Fnに反映され、それは以下の(8.2.7)式によって与えられる。
 すでに何度も現れたので理解していると思うが、(8.2.3)式右辺の記号 n=1

<8-27> (8.2.4) n=1 Sn=S1+ S2+

というように、その右側にある添え字nを持つ量の n1づつ増しながらそれをn=1から n=まで加えることを意味している。はギリシャ文字で、英語の「Summation(和をとること)」の頭文字Sの意味である。
 (8.2.3)式右辺の係数Fnf(x)を与えると決まる。それを表す式を導く過程で基準振動を表す関数の「規格直交関係」と呼ばれる関係式が必要になる。「規格直交関係」は物理学で非常に重要な役割をはたすので、少していねいに説明しておくことにする。
 まず(8.2.3)式の両辺に適当なmを持つ正弦関数 sinmπx をかけてから、両辺を xについて0の範囲で積分する。Fn xの関数でないから積分に関係しないので積分の外に出せ、

<8-28>  (*) 0sin xf(x)dx = n=1F n0sin xsin xdx

となる。(8.2.3)式中のλn2n で置き換えてあることに注意せよ。
 この右辺にある三角関数の積を含む積分を実行するために、三角関数の「加法定理

<8-29> (8.2.5)    sin(A±B) =sinAcosB±cosAsinB cos(A±B)=cosA cosBsinAsinB

を利用する。余弦(コサイン)に対する二つの式の引き算から

<8-30> sinAsinB=12 cos(A-B)-cos (A+B)

を得るので、これを使うと簡単に(*)式右辺の積分が実行でき、

<8-31>  0sin xsinx dx=12 0cos (m-n)πx -cos(m+n)π xdx

なので、

<8-32>  (**) 0sin xf(x)dx =12n=1 Fn 0cos(m-n )πxdx -0cos (m+n)πx dx =12n=1 Fn( m-n)πsin (m-n)πx -(m+n)π sin(m+n)π xx=0 x=

となる。例によって右辺の記号[] x=0x=はカッコ内…の xを代入したものから0を代入したものを引くことを意味する。
 (**)式右辺のnについての和を実行する。和は全ての自然数にわたるので、nの中には mに一致するものもあれば、 mと異なるものもある。もしnmと異なれば、右辺の分子と分母にある (m±n)0でない整数になり、(整数× π)の正弦(サイン)は0であるから、 x=0 x=(**)式括弧内の二つの項はともに0になる。しかし、もしn mに一致すれば一項目の分子も分母も 0になり、簡単には値が決まらず、慎重な検討が必要になる。
 n=mの時は一つ前の式、すなわち積分を行う前の式にもどって考えるとよい。その一項目でn=mとすると cos0=1であるからその積分は <8-33>0 dx=となる。<8-34> limnm (m-n)πsin (m-n)π xにロピタルの定理を使っても同じ結論が得られる。したがって(*)式右辺にある積分を行なった結果は

<8-35> (8.2.6)   0sin xsinx dx = (n=mのとき) 2(nmのとき) 0

となる。
 これに注意して(*)式右辺の nの和をとると、n=mのときだけしか値が残らないから、その結果は12Fmとなる。よって(8.2.3)式の右辺の係数は

<8-36> (8.2.7)  Fm=20 sinxf( x)dx (m は任意の自然数)

となり、もしf(x)が与えられれば、この式の右辺の積分を計算してすべてのFmを求めることができる。
 まとめると、f(0)=f( )=0なる関数f(x )を(8.2.6)式の性質を持つ関数を使って

<8-37> (8.2.8) f(x)= n=1Fn sinx

と表すことができる。ここで右辺の係数Fnは、表そうとする関数f(x)を使って計算され、

<8-38> (8.2.9) Fn=2 0sin xf(x)dx

で与えられる。この量は一つの数であることに注意せよ。(8.2.8)式右辺のnに関する級数を「フーリエ級数」といい、このように、x=0 x=を固定端に持つ弦の基準振動を与える三角関数を使って、f(0)=f ()=0である任意関数 f(x)を表すことを「フーリエ級数展開」という。
 もし、関数f(x)の情報が x点における限られた数値データとしてしか手に入らず、(8.2.9)式を使って展開係数を計算することができなかったとしても、(8.2.8)式の右辺が手に入った数値データをできるだけ正確に再現するように計算機を使って Fnの数値を決定することができる。いったん Fnが決まれば、(8.2.8)式を使ってデータのない x点の関数値を知ることができる。実は、実際に「フーリエ級数展開」が利用されているのはこのような場合が多いのである。各種の気象予報、地震が起きたときの解析もその例である。
 理学や工学に限らず、その他多くの分野でフーリエ級数展開が使われる主たる理由は、

  1. 非常に複雑な関数f(x)を扱わなければならないときでも、もしそれを(8.2.8)式の形に書くことが出来たら、その右辺にある三角関数はよく知っている簡単な関数なので、級数の各項ごとに必要な処理を施してからその結果を加えれば、f(x)に対して同様な処理をしたのと同じ結果が得られる。
  2. 多くの場合は(8.2.8)式の全ての項を考える必要はなく、 Fnが大きな値を持つ限られた数項を加えるだけで十分である。
ことによる。これらが持つ意味は電子計算機が手軽に使えるようになった二十世紀の後半からますます増した。
 この節の冒頭で「人工視覚の核心は光情報を電気信号(数値情報)に変換すること」と書いたが、(8.2.9)式が変換された電気信号の数学的な表現である。もしこの電気信号を視神経を経由して脳の視覚中枢に届けることが出来さえすれば、我々は像を頭の中に再生し認識することができる。この光情報(アナログ情報)のデジタル化を小型カメラとマイクロコンピューターに行わせるのが人工視覚の仕組みである。
 フーリエ級数展開は位置xを変数として与えられる情報 f(x)を、様々な振幅 Fnを持った基準振動に分解した式である。基準振動を表す関数は決まっているので、もとの関数の特徴はすべて振幅に反映される。すなわち、全ての展開の振幅を知ることと、元の関数を知ることとは等価である。このように、ある変数(x)によって与えられる情報をそれと異なる変数(Fn)で表わすことを数学では「変換」という。その一つである、「フーリエ級数展開」を利用した「フーリエ変換」が次節の主題である。
 (8.2.8)式右辺の三角関数はxで与えられた情報を異なる変数 (Fn)で表す変換の役割を担う関数である。このように、ある変数で表された情報を異なる変数で完全に表現する変換を担う関数を「完全系」といい、(8.2.8)式のような展開を完全系による展開という。すなわち、フーリエ級数展開は三角関数が形成する完全系を使った関数 f(x)の展開であり、「任意の関数は完全系を使って展開できる」という数学定理の一つなのである。
 (8.2.8)式を完全系を使った表現に書き換えると次のようになる。用いる完全系を

<8-39> (8.2.10) un(x) =2sin x,(n= 1,2,)

とすれば、un(x)を使って、 x=0 x=0である関数 f(x)

<8-40> (8.2.11) f(x)= 2n=1 Fnun(x)

のように展開することができる。ここで、右辺の展開係数は

<8-41> Fn=2 0un( x)f(x)dx

である。このとき、(8.2.6)式から、展開に用いた関数un (x)

<8-42> (8.2.12) 0 un(x)um(x)dx = (n=m のとき)1(nm のとき)0

を満足する。(8.2.11)式のように、xの適当な関数を展開することができる完全系 un(x)が(8.2.12)式の性質を持つとき、それを「規格完全直交系」という。
 ある関数を級数に展開するために使われる完全系は三角関数以外にもたくさんある。この節の sin(x),sin(2x ),,sin(nx), cos(x) ,cos(2x),,cos(n x),は完全系の代表的な例であり、 f(x)xのべき級数に展開するテーラー級数展開(マクローリン級数展開)に用いた (x0,x1 ,x2,,xn, )というxのべきが作る関数系も完全系の一つである。完全系による関数の展開は「物理学」の諸分野で重要な役割を果たすが、今はどのような完全系があるかを知るよりも、 「完全系を使って関数を展開することができる」ことを知っておくだけでよい。
 (8.2.10)式の完全系を使ってf(x)を表わすとき「 f(0)=f( )=0」という条件をつけたが、この条件を除くこともできる。その結果を証明なしに与える。すなわち、必ずしも f(0)=f( )=0でない関数f(x )がある領域で特別に妙な振る舞いをしなければ、それを

<8-43> (8.2.13) f(x)=F 0+n=1 Fnsin x+Gncos x

のように展開することができる。ここで、係数F0Fn Gnは展開する関数f(x )を使って

<8-44> (8.2.14)   F0=10 f(x)dx, Fn=20 sinxf( x)dx, Gn =20cos xf(x )dx

によって与えられる。以前、(8.2.8)式(または(8.2.11)式)を「フーリエ級数展開」と言ったが、一般的には、(8.2.13)式による関数 f(x)の無限級数展開を「フーリエ級数展開」という。
 今、関数f(x)がある決まった周期 Lを持って同じ値を繰り返す場合を考えよう。このときは f(x)xの全ての領域( -x+)で表す必要はなく、どこかの区間 Lにあるx (たとえば0x L)を持つf(x) を与えるだけで十分である。その区間にないxを持つ f(x)は、 xLを何回か加えるか、あるいは引くかして0 Lの間にある変数値x'を作り、その変数値を持つf(x')によって元のf(x)を与えることができる。そうすると、(8.2.13)式と(8.2.14)式は

<8-45> (8.2.15)  F0=1L-L /2L/2f(x)dx , Fn=2L-L /2L/2sin Lxf(x)dx, Gn=2L -L/2L/2cos Lxf(x )dx

である。ここで(8.2.15)式にある積分の区間は、長さがLでありさえすればどの区間でも積分される関数は同じ一連の値を持つので、どのように取ってもよい。ここではそれを -L/2xL/2と対称に取った。その理由は、もしf(x)が偶関数あるいは奇関数であれば、 Fn Gnのいずれかが0になるので計算をしなくてもよくなるためである。少し詳しく説明しよう。
 f(x)のフーリエ級数展開を行う時、 f(x)x2 x4のようにx偶関数、 すなわち<8-46>f(- x)=+f(x)の性質、あるいは xx 3のように奇関数、すなわち<8-47> f(-x)=-f(x) の性質をもつことがある。もしf(x) が偶関数なら(8.2.15)式でFn0になり、(8.2.13)式の右辺で正弦(サイン)関数の部分が現れない。また、もし f(x)が奇関数なら(8.2.15)式で Gn 0になり、(8.2.13)式の右辺で余弦(コサイン)関数の部分が現れない。このように展開する関数に偶奇性があれば、(8.2.13)式がとても簡単になる。ここでは以下でf(x) が偶関数ならFn0になることを示すので、そのまねをして f(x)が奇関数のときに Gn 0になることを示してもらいたい。

 【偶関数のf(x)に対して Fn=0なることの証明】
 (8.2.15)式にあるFnの式で、右辺の積分に関係する変数 xについて、x= -yの変数変換を行なう。<8-48> dxdy=-1であること、 xに関する積分の上限値 L/2と下限値-L /2を、yに関する上限値 -L/2と下限値 L/2に置き換えることに加えて、積分の上限と下限の交換に関して一般に成り立つ式<8-49>b af(x)dx=-ab f(x)dxおよび <8-50>sin(-θ )=-sinθより、

<8-51>  Fn=2LL/2 -L/2sin-L yf(-y)(-1)dy = -2L-L/2L/2 sinLyf( y)dy= -Fn

である。ここで、簡単な事実に気がつかないといけない。ある数Qに対してもし等式 Q=-Qが成り立てば必ず Q=0であることである。理由は少し考えればわかる。したがって Fn=-Fn であるから、Fn=0である。議論のポイントは積分に含まれる正弦(サイン)関数がxの奇関数であることである。もし理解できなければ、上で与えたやり方でGnが一般に 0ではないことを示してみればよい。(証明終わり)

 次に、Lがとても大きく無限大とみなせる場合を考える[4]。そのような場合、たとえば(8.2.15)式でLが三角関数の角度の分母にあるために、単純に Lとすれば全ての角度が 0となる妙なことになってしまう。この場合は元に立ち帰って考え直す必要があるのだが、残念ながらその議論はかなり厄介で今の段階で理解するのは難しい。それに関する考察は必要になった時に学べば良いので、ここでは結論だけを与えておくことにする。結論としてそのときはxの関数 f(x)

<8-52> (8.2.16) f(x)= 12π- g(k)eikxdk

と書くことができる。「フーリエ級数展開」の係数の役目をしているg( k)f(x)を使って

<8-53> (8.2.17) g(k)= -e-ikx f(x)dx

で与えられる。「物理学」では(8.2.16)式をf(x) の「フーリエ級数展開」、(8.2.17)式をf(x )の「フーリエ変換」ということが多い。上式中にある複素数 eikxはオイラーの恒等式((2.8.6)式)から

<8-54> (8.2.18) e±ikx =cos(kx)±isin(kx)

であり、その実数部と虚数部に三角関数を持つので、(8.2.16)式は本質的に三角関数による級数展開(8.2.13)式と同じ意味を持っている。そのことから、展開係数の役割をしているg(k)を「フーリエ係数」ということがある。


【関数のフーリエ変換】

 よく知っている関数系(完全系)である三角関数を使ってxの任意関数 f(x)を展開するフーリエ級数展開を学んだ((8.2.13)式と(8.2.16)式)。展開係数(「フーリエ係数」)はfから計算され、その関数情報を正確に反映している。このように、fに関する情報をフーリエ係数で表現することを「f(x)フーリエ変換」という。フーリエ変換とは「関数の情報を固有振動の波長情報として取り出す」と言ってもよい。フーリエ変換を行う一つの理由は関数が複雑でその性質が分かりにくい場合であっても、フーリエ係数が関数の持つ特徴を思わぬほど明確に表し、それによって関数の性質がより明確になることがしばしばあるからである。このように、複雑な関数の性質をフーリエ係数を使って調べることを「フーリエ解析」とよぶ。
 フーリエ解析は物理学の研究手段としてのみならず、音や光のように振動が関わる自然科学分野、コンピューター・グラフィックス、工学の諸分野、医療、音楽、気象、経済など、世の中でとても多く実用的に使われている。その一つの例は医療の「CTスキャン」である。知っていると思うが、「CTスキャン」とはX線を照射して、それが外部にもたらす人体や物質の情報(フーリエ係数情報)をコンピュータを使って人体や物質の構造を表す位置情報に変換し、その構造をモニター上に表示する技術である。最近は画像処理技術の向上によって結果を3次元図としても表示することができるようになった。
 この他にフーリエ変換が使われる例として、人間の声の識別をする「声紋」分析がある。人間が発する声(音)のフーリエ解析を行うと、人それぞれが特徴ある声のフーリエ係数(声紋)を持っていることが分かり、それを使って個人を特定することができる。最近では、パソコンや携帯端末で声紋によって本人認証を行う認証システムも開発されている。
 (8.2.16)式の「フーリエ変換」で気がつかなければいけない重要なことがある。それは

  • eikxを使って任意関数 f(x)のフーリエ変換((8.2.16)式)を行ったとき、フーリエ係数g(k)を与える(8.2.17)式は、定数の違いを除けば、e-ikxを使った関数 g(k)のフーリエ変換を行う式でもある。これを「フーリエの逆変換」という。
 物理に限らず、私たちはいろいろな分野の学習をするなかでフーリエ変換に出合うことが少なくない。ここでは完全系 eikxを使ったフーリエ変換の実例を二つあげておく。第一の例に対しては証明を与えるが、第二の例は結論のみを与える。第二の例はコーシーの積分定理の応用例でもあるので、自力で証明を試みるのがよい。
  • 【例1】 aを正の定数とするとき、関数 f(x)=e -a|x|のフーリエ変換 g(k)を(8.2.17)式にしたがって求めよ。知っていると思うが、 |x| xの絶対値を表し、その意味は

    <8-55> |x|= +x(x0  のとき )-x( x0 のとき )

    である。

  • 【解1】 (8.2.17)式におけるf(x)= e-a|x|のフーリエ変換の積分領域を xの負の部分と正の部分に分解し、

    <8-56>  g(k)=- e-ikxe- a|x|dx =-0e -ikxe-a|x| dx +0e- ikxe-a|x| dx

    とする。一項目はxが負の領域にあるので |x|=-x、二項目は xが正の領域にあるので |x|=+xであるから、

    <8-57>  g(k)=-0 e-ikxeax dx +0e-ikx e-axdx =-0 e(a-ik)xdx +0e (-a-ik)xdx

    となる。しかるに<8-58> epxdx=epxp であるから、よって

    <8-59> g(k)= e(a-ik )x(a-ik) -0 + e(-a-ik)x (-a-ik)0

    である。aは正であるから、右辺の一項目の下限で x=-とした項は eaxのために 0となり、二項目の上限で x=+∞とした項はe- axのために0になる。ゆえに x=0の項だけが一項目と二項目で残り、

    <8-60> g( k)=1(a-ik) -1(-a-ik) =2aa2+k2

    を得る。

  • 【例2】 ガウス関数f(x)= e-a2x 2(ただしaは正の定数とする)のフーリエ変換g(k)を(8.2.17)式を計算して求めよ。
  • 【解2】 結果は

    <8-61> g(k)=π ae-k2 /(4a2)

    である。この変換の結果は元のガウス関数に置き換えxk 2a2を行った、やはりガウス関数である。これを簡単に「ガウス関数のフーリエ変換はガウス関数」と憶えておくと役に立つことがある。aを大きくした時(あるいは小さくした時、f(x)g(k)がどのような影響を受けるかを考えよ。


§3. 関数のラプラス変換

 複素数を学んだときに「実数を複素数に拡張することは、手に入れた知識を拡張する一つの方法で、このやり方で我々は多くの新しい知識を手に入れてきた」ということを書いた。関数の「ラプラス変換」もその一つである。数学的な操作として表現すると、(8.2.17)式右辺の関数 f(x)x0の領域でのみ値を持つとき、 kの代わりにk isとして現われるsの関数を fのラプラス変換という。すなわち、 f(x)のラプラス変換とは

<8-62> (8.3.1) F(s)= 0f(x)e-sx dx

である。
 これ以上は詳細に立ち入らないが、ラプラス変換は「シムテム工学」や「電気工学」の分野で、電気回路に流れる電気信号を与える微分方程式の解を求めるときに使われる、非常に便利な数学的手段である。難しそうに感じられるかもしれないが、実はラプラス変換を使った微分方程式の処理は機械的にできる。そして「シムテム工学」や「電気工学」で現れる関数や方程式のなかには、変数 xで表した関数や方程式が複雑であっても、それを変数sに変換すると、とても簡単になる場合がいくつもある。
 ラプラス変換が物理で重要な役目をはたす例はそれほど多くはないが、その一つに、「統計物理学」に現れる「分配関数」があることを言っておく。形だけを示せば、分配関数Zは(8.3.1)式で x=E s=βとしf(x) =g(E)とした関数で、

<8-63> (8.3.2) Z(β)= 0g(E)e-βE dE

という形をしている(今は式の形に注目するだけでよく、この式の意味を理解する必要はない)。右辺の g(E)は物理系の特徴を反映する状態密度とよばれる重要な量であり、二つの重要な量(分配関数と状態密度)を関連付けているのがラプラス変換である。したがって一方が得られれば他方が決まることになる。
 述べたように、工学の分野と違って物理学の分野ではラプラス変換が使われることはそれほど多くはない。しかし、ある種の微分方程式の解がラプラス変換を利用すると簡単に得られることがあるので、簡単な関数のラプラス変換を知っておくと便利なこともある。ラプラス変換のいくつかの例を以下に与えておく。積分の練習と思って証明を試みるとよい。f(x )のラプラス変換をL{f(x )}と表記するのが普通である。

簡単な関数f(x)のラプラス変換の例 L{f(x)}

関数f(x) L{f(x)}
<8-64> 定数a <8-65> as
<8-66> xn(n >0) <8-67> n!s n+1
<8-68> e-λx (λは定数) <8-69> 1s+ λ
<8-70> sin(λx) (λは定数) <8-71> λs2 +λ2
<8-72> cos(λx) (λは定数) <8-73> ss2 +λ2


 ひとつだけ「ラプラス変換の線型性」とよばれる面白くかつ重要な性質をあげておく。自力で証明することができるので、余裕があれば証明を試みるとよい。

【ラプラス変換の線型性】
 xの二つの関数f (x)g(x)abを定数として加えた関数(af(x)+ bg(x))のラプラス変換に対し、等式

<8-74> (8.3.3)  Laf(x)+bg (x) = aL{f(x)}+bL{g (x)}

が成り立つ。これを「ラプラス変換の線型性」という。

 「ラプラス変換の線型性」はとても便利な性質であって、実用に際しては当たり前のように使われる。仕事上でラプラス変換を使う場合は、先に挙げた簡単な関数のラプラス変換と「ラプラス変換の線型性」を組み合わせ、計算の処理を簡単化することが多い。この他にもラプラス変換に関する面白い性質が多くあるが、ここでは割愛する。

[1]  「特異点」に対するここでの表現(無限大になる点)は厳密な意味で言えば正しくない。しかしここでは「 zの関数が無限大になる zの値が特異点」であると考えておけば十分である。

[2]  近年は「人工視覚」や「人工網膜」の他にも視覚をほとんど持たない人の視覚を補助する「eSight」といったような装置が考案されていて、それを装着した母親が生まれた我が子を「見て」喜ぶ姿はやはり多くの人の感動を呼んだことを付言しておく。

[3]  「音程」とは弦をはじいた時に生じる振動の「周波数」あるいは「振動数」の違いで特徴づけられる音の性質をいう。周波数や振動数は「波動」で詳しく学ぶであろうから、ここではそれに関連した数学の話だけに限る。

[4]  たとえば、1[cm] ×1[cm]×1[cm]の大きさを持った金属の電気的な性質を調べようとする。このときは=1 [cm]と考えてよい。金属の電気的性質を担う電子は金属内に配列された原子間の距離 10-8 [cm]程度の波長を持った基準振動に対応させられる。この大きさから考えれば、 はその1億倍程度の大きさを持ち、電子振動の波長に対してを無限大と考えて十分よいことがわかる。